テガーとメーユは、先ほど試し書きをした便箋を見ながら、何やら話しています。
「メーユはこの便箋と封筒と切手はどこで手に入れたんだい?」
テガーに聞かれたメーユは動揺しました。
天使に試練を与えられたなんて言ったら、自分が悪魔だってことがばれてしまうかもしれないと思いこう答えました。
「道で出会った人にもらったの。
人助けしたお礼に…って。」
「人助け?、キミが?」
テガーは出会ったばかりなのにメーユの事を昔から知っているような口調でいいました。
「な、なによ、私が人助けしちゃいけないわけ。」
メーユは少し口をとがらせ怒りましたが、何か見透かされているような気がしてテガーの顔は見れませんでした。
テガーは何かを確信すると、メーユに向かっていいました。
「ごめんごめん、言い方が悪かったね。謝るよ。
それでメーユはこれの使い方がわかるのかい?」
テガーの手には切手がありました。
「これって切手じゃないの?」
メーユはごく普通に答えました。
「いや、よく見てごらん。普通の切手は料金が書いてあるだろ。
この切手は料金が書いてないんだ。」
そうテガーがいうと、メーユも切手をみましたが、確かに料金は書かれていませんでした。
その代わりに、ネコのマークと無限大のマークが書かれています。
テガーが言いました。
「この切手も便箋も封筒もおもちゃには思えないんだけど…
でも普通には使えないような気がするし…」
メーユは考え込んでいるテガーを見てこういいました。
「試しに使ってみようよ‼︎」
テガーはメーユの大胆な発想にびっくりしましたが、確かに考えていても仕方がないので、試しに使うことにしました。
「とりあえず、さっき試し書きした便箋を封筒に入れて、切手を貼って…」
メーユがそう言いながら切手を貼った瞬間、封筒が七色に光りました。
「何なに??」
驚くメーユ。
「なにが起きたんだ‼︎」
テガーもびっくりしています。
そうすると、光の中から一匹のネコが出てきました。
ネコは白とグレーが混じった毛の色で、台車に乗っています。
ネコの手には封筒があります。
そして、メーユの顔をみると面倒くさそうにため息をつきながら言いました。
「ふぅ。困るんだよねー、素人は」
メーユとテガーは驚いて声もでません。
台車に乗ったネコは続けました。
「ちゃんと宛先を書いてもらわないとー
いったいどこの誰に届けていいかわからないよねー?
僕らもねー、遊びで台車ネコやってるんじゃないんだからさー。」
メーユは驚きながらも、ようやく口を開きました。
「ネ、ネコさん。どっからでてきたの?
手紙をネコさんが運んでくれるの?
宛先ってどこでもいいの?」
メーユの質問に、台車に乗ったネコは答えました。
「質問多いねー 答えてあげるけど、
まず、訂正からしとこうかー
僕はネコさんじゃなくて、台車ネコ。
魔法の手紙の配達係さ。
魔法の切手の中に住んでいて、魔法の封筒に貼られた瞬間から僕らの仕事は始まるのさ。
僕らはどこにでも一瞬で、魔法の手紙を運ぶことが出来るよ。
天国の世界はもちろん、それ以外の世界にも…。
宛先がわからなければ、手紙を出す相手をイメージすれば、それで届けることができるのさ。
もちろん、会ったことのある相手に限るけどね。」
台車ネコの存在と説明に、驚くテガーとメーユでしたが、テガーは手紙を手にするとようやく口を開きました。
「魔法の手紙…これが、魔法の手紙なのかい?」
テガーは長年の探し物を見つけたような口調で聞きました。
「そうさ。これが魔法の手紙さ。
早く届け先を決めてくれよ。」
台車ネコは少し自慢げです。
台車ネコ♬
「僕の名前は台車ネコー
魔法の手紙の配達係さー
いつでもどこにでもお届けするよー
それが魔法のチカラなのさー
嘘だと思うなら試してごらんよー
今すぐお届けしてみせるからー。」
テガーはメーユの顔をみて言いました。
「試してみていいかい?」
「もちろんどうぞ。」
メーユはニッコリと微笑み即答しました。
テガーは、辺りを見渡すと、ひとつ向こうの山の上にある帽子屋をゆびさして台車ネコにこう言いました。
「あの帽子屋に届けることが出来るかい?」
「もちろん、簡単なことさ。」
台車ネコはそう告げると、台車から降りて、手紙を台車に乗せてゆっくりと台車を押し始めました。
テガーとメーユは心の中で同じ事を思いました。
「台車使うのか…」
2人がそう思った瞬間に台車ネコは消えてしまいました。
そして、ひとつ向こうの山の帽子屋の窓から、キリンが首を出てきてキョロキョロしています。
それをみたテガーがいいました。
「メーユ、魔法の手紙は本物だよ。
あの帽子屋のオーナーはキリンなんだよ。だからここからでも長い首がよーく見えるだろ。
僕らが送った手紙は、差出人も書いて無いし、内容だってただの試し書きさ。
そんな手紙が届いたら真っ先に周りを見渡すだろ。
予想した通りになったよ。
間違いなくココにあった手紙が一瞬で帽子屋のキリンのもとに届いたんだ。」
メーユはテガーの頭の回転の早さに感心しました。
と、同時に疑問になることがありました。
(テガーは魔法の手紙の存在を知っていたのかしら…)
メーユはテガーに聞くことは出来ませんでした。
そのことを聞いてしまうと、また魔法の手紙をどうやって手に入れたのかをテガーに聞かれると思ったからです。
「どうしたんだい?メーユ?」
すっかり考え込んでしまっていたメーユにテガーが言いました。
「な、なんでもないわ。この手紙が魔法の手紙なんて驚いてるだけよ」
メーユはまたテガーの顔を見ずに答えました。
「そうだよね、僕もびっくりしたよ。」
テガーはメーユの動揺には気づいていないようでした。
すごく嬉しそうなテガー。
テガーの喜びを不思議に思うメーユ。
そして今、地獄と天国をつなぐトンネルが再び開いて、1匹の悪魔が天国に向かっていました。
その悪魔はメーユの婚約者である、悪魔王子エアメーでした。
第2章 魔法の手紙
終わり
続きを読む