テガーとメーユはすぐに母鳥のもとへ辿り着きました。
母鳥は、メーユとテガーが暗くなった森から帰ってきたことに喜びましたが、すぐに坊やの姿が見えないことに気づき落胆しました。
テガーは、母鳥に森で出会った悪魔のこと、そして、悪魔と取り引きをしたことを伝えました。
母鳥はとりあえず坊やが無事なことにホッと安堵のため息をつきました。
ひととおり、説明をしたテガーは厳しい顔をしたままメーユに言いました。
「メーユ、君に頼みがあるんだ…」
「何かしら?私に出来ることなら何でもするわ。」
メーユは即答しました。
「魔法の手紙はあと何枚残ってる?」
テガーは厳しい表情のままメーユに聞きました。
「魔法の手紙?なんでいま魔法の手紙の残り枚数を気にするの?」
「いいから数えてくれ…」
テガーがそういうと、メーユは魔法の手紙の枚数を数えました。
「あと3枚だわ…」
メーユが残り枚数を伝えると、テガーの表情はより険しくなりました。
「坊やを救う為には、魔法の手紙が2枚必要なんだ…」
メーユは思わず「えっ?」と言ってしまいました。
そして、心の中で考えました。
(何故、魔法の手紙が必要なのかしら…どうやって使うの?
これで2枚使ったら残りは1枚になってしまう…
元の姿に戻るには、魔法の手紙で、愛を知らなければいけない。
残りの1枚で愛を知ることが出来るのだろうか…
いや、今はとにかく鳥の坊やを助けるのが優先だわ…)
「テガーを信じるわ、使って。」
メーユはすぐに決断すると、魔法の便箋、封筒、切手を2枚ずつをテガーに手渡しました。
「これも必要ね」
メーユは魔法のペンもテガーに差し出しました。
「ありがとう…」
テガーはそう言うと、メーユに軽く微笑みました。
そして、魔法のペンを使って、何かを魔法の便箋に書き出しました。
何かを書き終えると、テガーは便箋を折りたたんで封筒に入れました。
そして、なんと封筒のなかに、魔法のペンをいれました。
ペンは封筒に吸い込まれるように入っていきます。
さらに、新品の便箋と、封筒と、切手もいれてようやく封をしました。
「これでよし。」
テガーはそう言うと、母鳥に近づき、
「あとは、お母さんの出番です。坊やにこの手紙を届けたいと思いながら、封筒に切手を貼ってください。」
と言いました。
母鳥はテガーに言われたまま、坊やに手紙が届くように…と願いを込めて切手を貼りました。
すると、封筒に切手を貼った瞬間、封筒は七色に光り、台車ネコが出てきました。
台車ネコは言いました。
「これをあんたの坊やに届ければいいんだな。」
「坊やに届けることができるの?
今はどこに居るのかわからないのよ?」
母鳥は、台車ネコに聞きました。
「簡単なことさ。」
そう言うと同時に、台車ネコは台車から降りて手紙を台車に載せ、押し始めました。
その瞬間、台車ネコは消えてしましました。
「いったい、どういうこと?
手紙には何を書いたの?
説明してよ、テガー」
メーユはテガーに言いよりました。
テガーは自信を持った顔で、説明を始めました。
「さっき坊や宛に送った手紙には、こう書いたのさ。」
-------鳥の坊やへ--------
僕の名前はテガー。
山のふもとのペン屋のヤギさ。
君は今、突然この手紙がやってきてびっくりしてると思う。
この手紙は、知っている人のところならどこにでも届けることが出来る魔法の手紙なんだ。
君のママに頼んで、君に届くように祈りながら切手を貼ったから届いたのさ。
悪魔に囚われている君を、これから助けにいくよ。
ただし、場所がわからないんだ。
君はどこに閉じ込められているんだい?
森の中の大フクロウの巣の中かい?
それとも、もぐらネズミの穴にいるのかい?
そこに入っているペンと手紙を使って居場所を教えてくれ。
もし、いる場所がわからなかったら、そこから見える景色や気づいたことを書いてくれ、出来るだけ詳しく。
すぐに助けにいくから。
そうそう、切手を貼るときは必ず、お母さんに届くように…って願いを込めて貼ってくれよな。
そうしたら変なネコが出てくるからあとはそいつに任せればいいよ。
じゃあ、すぐに迎えにいくからな。
頼んだぞ。
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「なるほど‼︎ 」
そう言うと
メーユはとても関心しました。
(これなら上手くいくわ…)
メーユは心の中で考えました。
テガーの作戦は魔法の手紙の性質をうまく使ったものでした。
居場所のわからない坊やにでも、台車ネコなら手紙を届けることができます。
さらにもう一枚、魔法の手紙を使うことにより、坊やから母鳥へと手紙を届けることができます。
これで坊やが居場所を書いて返信してくれれば、場所は特定できます。
テガーの自信がありそうな態度とはうらはらに、母鳥は本当に坊やに手紙が届くのかを心配しています。
そんな母鳥にテガーが言いました。
「さっきの手紙は間違いなく坊やに届いてるさ…
じきに坊やから返事がくるよ。」
そう言うと、母鳥は少し安心したようです。
突然、母鳥の前が七色に光りました。
と同時に光の中から台車ネコが飛びたしてきました。
「ゆうびーん」
台車ネコは母鳥にむかって封筒を差し出すと、そのまま消えてしまいました。
「ま、まさか坊やから手紙なの⁇」
母鳥は興奮しながら封筒を開けました。
そこにはこう書いてありました。
----テガーおじさんへ----
お手紙ありがとう。
魔法の手紙ってすごいね。
壁をすり抜けて変なネコが、おじさんの手紙を持ってきたから本物なんだろうね。
でも残念なことに、今、僕はどこにいるのかわからないんだよ。
暗くてよく分からないけど、ここの窓からは大きな塔が見えるよ。
そして何か分からないけどカチカチと音がしてるよ。
それに、さっきから香ばしいパンの匂いがするんだ。
きっとメロンパンの匂いだよ。
これで場所がわかって助けに来てくれるといいな…
テガーおじさん、ママに伝えておいて…
心配しなくても僕は大丈夫だからって。
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手紙を読み終えた時、テガーは言いました。
「時計台のコウモリのパン屋だ‼︎」
メーユも聞いたことがありました。
西の森の奥深くにある時計台の隣に、パン屋がありました。
そのパン屋は準備中の張り紙がしてありお店は閉まっているのですが、何故か夜になると焼きたてパンの香りがするのだそうです。
その理由が、メーユには今、分かりました。
コウモリのパン屋なら、昼と夜が逆転しています。
きっと夜遅くにお店をあけているのでしょう…
メーユも
「きっとそこに坊やがいるわ‼︎」と言うと、テガーと目を合わせ頷き、時計台の方へと走り出そうとしました。
それを見ていた母鳥は大きな羽根を広げ、テガーとメーユに言いました。
「さあ、私の背中に乗って。
時計台まで連れていくわ。」
「でも、まだキズが…」
メーユが心配そうに母鳥に聞きました。
母鳥はいいました。
「これくらいのキズなら時計台までは行けるから大丈夫よ。」
メーユとテガーは母鳥の言うとおりに背中に乗ると、時計台の方へと飛んでいきました。
第5章 作戦
終わり
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